私の色彩ヒストリー

事務職から専門職を志望してインテリアを勉強。
やがて設計・デザインを行う事務所を開業。
地域コミュニティで色のワークショップなども。

鈴木章子さん

色彩検定協会認定講師 第23期生
サッコデザインオフィス 主宰
日本色彩学会会員 二級建築士
インテリアコーディネーター

鈴木 章子さん

  • 色鉛筆をグラデーションに並べてはうっとり。

    小さい頃からの遊びの中で、色はいつも近くにありました。多色の色鉛筆をグラデーションに並べてはうっとりとし、無いものは作ってしまえ!と、人形や人形の家、家具なども自作。厚紙に色紙を貼ったり、色を塗ったりして楽しんでいました。
    幼い頃から手に職を持ちたいという思いもあり、大学時代は社会福祉を学び、福祉の道に進むべく真剣に取組みましたが、就職活動時、ふと幼い頃楽しんだインテリアやモノ作りに携わりたいと急遽、進路変更を決断。住空間の設計部門を持つメーカーに就職しました。

  • 事務職採用ながら夜間にインテリアを勉強、
    資格取得を糧に実績を重ね、開業を果たす。

    事務職採用でしたが、「インテリアの資格を取るのでスキルを活かせる部署に異動させてください」と無鉄砲にも上司に掛け合い、インテリア専門学校の夜間クラスへ通い始めました。そこで色を学ぶ面白さを知り、授業だけでは物足りなくなって色彩学担当の先生のプライベートスクールにも通いました。
    20歳代の後半になると知識の証しとなる資格取得を目標に据えて学びを継続。色彩検定 3級・2級、インテリアコーディネーター、二級建築士の資格を取りながら仕事もステップアップ。やがて住宅や店舗の設計から内装までを手がけるデザイン事務所を開設するに至りました。このように書くと順風満帆に思われるかもしれませんが、挫折もありました。30歳代で色彩検定1級1次は通過したものの、出産と育児が重なり2次で不合格に。以来、「1級合格」という願いが頭から離れず、40歳代半ばで子育てが一段落したのを機に再挑戦し、合格することができました。

  • 見えない力に導かれるように講師養成講座を受講。

    1級の合格証書が届いた数日後に驚く事がありました。それは建築の専門学校で講師をしている友達からの何年ぶりかの電話で、なんと学校でカラーコーディネートの講師をして欲しという嬉しい依頼でした。二つ返事で受けることにしましたが、講師の経験はありません。そこで少しでも良い授業ができるように講師養成講座に申し込みました。見えない力に導かれているようで、講師養成講座のエントリー時に提出する「この講座をなぜ受講しようと思ったのか」を書いた時の高揚感は忘れません。また、その講師養成講座の第1回目の講義が、20年も前、色の勉強を始めた頃に出会って使い込んできた『色彩演出事典』の著者・編者である北畠耀先生だったのには鳥肌が立ちました。

  • 本物を教材にしたリアル感のある授業がモットー。

    学生を指導する上で意識していることは、リアル感です。私の事務所で担当している工事中の現場があれば、リアルな教材として取り入れ、進捗状況とともに色の使い方や効果などを説明します。また配色の単元では古い和服の正絹を手に入れて色分析をするなど、できるだけ本物に触れ、気付きが得られるような工夫をしています。授業後には私の服装の色分析をして報告をくれる学生もいて交流を愉しんでいます。

  • 昭和の団地の外壁塗装の色彩設計が環境色彩コンペで最優秀賞を受賞。

    ここ何年か頂いた仕事で特に印象的だったのは、昭和に建てられた団地の外壁塗装(塗替え)の色彩設計です。外壁色は環境に与える影響も多大です。計画に際し、その土地の歴史や地形、成立ち等の資料を読み、測色をしながらその「場」の色を読み解きます。そして条例等を踏まえながら施主の要望も取り入れて色彩設計を行います【写真1】。天候や季節、 時間によっても色の見え方は変化しますが、その変化の中でも地域の方たちに心地良さや土地のアイデンティティを感じて頂けたら嬉しいです。実際に色彩設計したものがどのように評価されるのか気になり、第23回グッド・ペインティング・カラーという環境色彩コンペティションに応募したところ、改修部門で最優秀賞を頂くことができました【写真2・3】。 また、地域のコミュニティで色に関するワークショップを開催したり【写真4】、デザインの色選定に関わらせて頂いたりと活動は様々な領域に広がっています。
    大切にしていることは、色彩の理論の先にあるハッとさせられる色彩感覚です。機能性を重視する場合、 配色のルールは大切ですが、イメージを捉える場合は、時にルールを超えエッジの効いた心に響く配色を作っていけたらと思っています。これからも色の世界に真摯に向き合って行きます。

    • ヒストリー01
      【写真1】塗装見本
    • ヒストリー02
      【写真2】環境色彩コンペティション グッド・ペインティング・カラー受賞リーフレット
    • ヒストリー03
      【写真3】神奈川県住宅供給公社 小田原橘共同住宅
    • ヒストリー04
      【写真4】ライフデザインラボでの色彩講座