私の色彩ヒストリー

ファッションフリークだった私が
色の世界の面白さにハマって20年以上。
通信教育で色を教えることの真髄を知り、
理論と感性の両面を研鑽し続けてきた。

浦山千砂さん

色彩検定協会認定講師 第3期生
色彩講師/カラーコンサルタント

浦山 千砂さん

  • 母による刷り込みでファッションフリークに。

    私の場合、幼い頃から絵を描くのが好きだったというわけでも、何か特別な出来事があって「色」に関心を持つようになったわけでもありません。ただ、振り返ってみれば、今の仕事をするために必要なことの多くは、育ってきた環境や過ごしてきた時間の中で培われていたように感じます。特にファッションについては完全に刷り込みで、文化服装学院出身の母のもとに生まれたことが大きく影響しています。なにしろ物心ついたときから、新しい服を買うたびに「その色はどう組み合わせるのか」と尋ねられ、素材や縫製なども含めて専門的な指摘をされましたし、はたまた、紅白歌合戦を見ていても、登場する歌手のコーディネートに対してダメ出しと修正を聞かされる、という具合でした。その影響もあって、10代の頃には国内外のファッション雑誌を読み漁り、東京コレクションにも足を運ぶほどのファッションフリークになっていましたし、そのような環境の中で身についたことの全てが、苦労なく色彩検定を取得できた一因になったと思います。

  • 色の資格、色の仕事があることも知らなかった。

    そもそも色彩検定を受検しようと思ったのも、当時、次の仕事が始まるまで数カ月待機という何とも宙ぶらりんな状況の中、乗り合わせた電車でたまたま色彩検定の吊り広告を目にしたのがきっかけです。それまで何か資格を取ろうと思ったことなどまったくなかったのですが、そのときはなぜか「色の資格って?」と興味を持ち、その日のうちにいろいろ調べていました。調べるうちに「色」で仕事をしている人たちがいて、カラーコーディネーターという職業があることを知ったのです。だからといって「カラーコーディネーターになりたい」と考えたわけではなく、「時間もあるし、何かの役に立つかも…」くらいの軽い気持ちだったのですが、結果的にその行動が今につながるわけですから"運命の出会い“だったのかもしれません。

    ヒストリー01
  • 講師の先生方の教えは
    教える立場に立つとよくわかる。

    とにかく「色」やそれにまつわるアレコレを学ぶことが楽しく、1級の上に位置付けられる講師養成講座はワクワクする気持ちに動かされて受講しました。特に印象的だったのは、マンセル表色系の100色相環づくりを行ったことと、坂田勝亮先生の授業です。坂田先生の授業は講師養成講座の名物となっていますので、認定講師のどなたとお話をしても必ず盛り上がります。私は最後から2番目の発表だったのですが、多くの人が謙虚に先生の講評を聞く中、私は自分の意見を返したこともあって、同期の皆さんから「怖い人だと思っていた」と、後から聞いた思い出があります。講師の先生方の教えは、自分が教える立場に立つと本当によくわかるので、それもまた面白く感じています。

    ヒストリー02
  • 通信教育で初学者に色を教えることの
    難しさを痛感。

    認定講師になって初めて携わったのが通信教育の仕事だったのですが、その経験が「教える」ことのベースになっています。あれがなければ今の私はないと思うくらい、勉強になりました。具体的にいうと、様々な質問を受ける中で"初学者が、どこでどうつまずくか“ということが身をもってわかり、それに対して"文章だけで理解してもらう“という、一見地味な作業の繰り返しが、後々の講義にとても役立ったのです。「それだけ?」と思われるかもしれませんが、色の知識がゼロの人に、文章で噛み砕いて伝えるというのは想像以上に難しく、自らが整然と理解できていないと的確な説明はできません。ときには脳の専門書を読み、ときには眼科医の論文を読むなどして、知識を深めながら回答していました。
    ほぼ同時期に、自身が学んだスクールからのオファーを受けて、本格的に講師の道を歩みだしたのですが、気がつけば20年以上も講師をしていて、誰よりも私自身が驚いています。その後は、「色」を軸にブライダル関連やインテリアなど担当講座も増え、またテキストの執筆や問題集の制作、企業研修というように、仕事の幅も広がっていきました。自分から積極的に働きかけることが苦手な私が心がけたことは、依頼された仕事に対して「誠意を持って最善を尽くす」ことだけです。幸いにも人と仕事の縁に恵まれ、今に至っています。

    ヒストリー03
  • 「色」全般について教えられる講師の減少を危惧。

    色に携わる仕事をしようと思ったときに、「理論と感性の両方を兼ね備えた専門家でありたい」と思い、様々なスキルを磨いてきました。その姿勢は今も変わりません。仕事そのものについては、今も昔もこれといった目標は持っていないのですが、最近ふと思うのは、以前に比べて「色」全般について教えられる講師が少なくなったな、ということです。近年、パーソナルカラーの人気が高まり、私がトレーナーとして携わっている大手化粧品会社のメイクアップレッスンも、600人を超える方たちが予約のキャンセル待ちをしているような状況です。そのような中で、パーソナルカラーやスタイリングを仕事にしようとする人は多く、SNSで情報発信する人もたくさんいます。反面、「色」の知識を深めよう、正しい知識を伝えよう、と考える人は減少しているように思えるのです。ある意味、体力勝負の仕事なので、毎日どこかで講義をしたり、執筆したりする今のスタイルは、そう長くは続かないかもしれないと思っています。いざとなったときに、バトンを託せる環境をつくらなくちゃいけないのかなと、まだ漠然とですが考えたりしています。

    ヒストリー04