私の色彩ヒストリー

広告クリエイターとしての自信を砕き、
奥深い色彩の世界に導いてくれた色彩検定。
専門学校の教員として色彩授業を吟味しつつ、
自らの創作活動にも色彩の力を注入。

橋本克之さん

色彩検定協会認定講師 第22期生
グラフィック・Webデザイナー、広告クリエイター
学校法人八文字学園 水戸電子専門学校 情報メディア学科 教員

橋本 克之さん

  • 「井の中の蛙」だったことに愕然。

    きっかけは「業務命令」でした。専門学校で常勤教員として働くようになり、「色彩検定の資格取得をめざすカリキュラムを担当して欲しい」と話があったのが始まりです。2009年より学生に3級・2級の範囲を教えるようになり、それが「新しい色彩の世界」との出会いとなりました。
    デザイン・広告制作を生業としてきた私にとり、なにより身近であったはずの「色」。顧客に色彩プランを得意げにプレゼンテーションしていたあの頃の自分。「色彩検定」の内容は、私自身がまさに「井の中の蛙」であったことを自覚させるものでした。

  • 「お達し」により色彩検定1級を受検。

    色彩を教えるようになって5年ほどが過ぎたとき、学園理事長より教員全員に対して「学生指導に利するため、上級資格を取得するように」との業務命令が下りました。多くの教員が国家資格に挑戦することを決める中、それに匹敵するものとして私は「色彩検定1級」を選びました。それが1次試験まで残り約9カ月という頃。何とか1次、2次と無事クリアすることができましたが、あの「お達し」がなければ自ら1級受検をすることはなかったかもしれません。

  • 「色彩を学び、 教えていくための知恵」を吸収。

    1級の資格を手にしたとき、さらに上をめざしたいという欲に駆られ、「認定講師」にチャレンジしようと即決しました。
    「認定講師」は、人に色彩を教えていいよというお墨付きをもらうようなものですが、動機はただただ純粋にもっと色の世界を極めたいという一心でした。そして2015年4月、意気込んで「講師養成講座」に参加したのですが、そこで要求されるレベルは予想以上に高く、またもや私は自信を打ち砕かれることになりました。
    「色彩の奥深い世界」と「その学び方」、そして「色彩の教え方」。様々な大切なことを教えてもらいました。それは、その後の「私と色彩の関わり方」そのものに対する「気づき」でした。根底にあるのは「創意工夫」。各講座の内容には、「テーマや内容」がありました。しかし、それ以上に、「色彩を学び、教えていくための知恵」が溢れていたように思えます。
    「仲間」も講師養成講座で得た財産でしょう。まわりには他の色彩関連の有資格者がたくさんいました。「講師養成講座22期」は非常に結束が固く、難関の各講座テーマをクリアするため、カラオケボックスに集っては、模擬プレゼンテーションを繰り返したものです。お互いに刺激を受けたり、将来のプランを話し合ったり……。今、それぞれの分野で活躍されていることを知ると、とてもうれしく、励みにもなっています。

  • 学生の合格率が85~90%を維持するように。

    専門学校生に色彩を教える者として、大切にしていることが二つあります。一つ目は「色彩検定に合格させること」。二つ目は「色彩の奥深さ、面白さを知ってもらうこと」。学生の中には、他の資格試験との兼ね合いで、色彩検定を受けることができない者もいますが、それらの学生にも「色彩を学んでとても良かった」と思ってもらえる内容にするよう心がけています。
    講師養成講座が学生指導に直接影響したことの一つとして、色彩検定3級(1年生20人程度が冬期受検)の「合格率の向上」があげられます。以前の合格率は不安定で、指導力の問題と学生の資質(勉強する習慣が身に付いているかどうか、など)によって、波がありました。講座にヒントを得てからは合格率が安定し始め、このところ連続で合格率85~90%を維持しています(2018年は、不合格の学生全員が、もう少しで合格という不合格A判定でした)。

    • ヒストリー01
    • ヒストリー02
      「PCCSトーン図の描き方」指導初日の板書。
  • 講師養成講座の教訓を指導の現場で実践。

    どうすれば合格率を上げることができるか?カギは、講師養成講座の教訓にありました。それは「全くの初学者にもわかるように指導する」です。合格するために必須となる図(色相環、トーン図、眼の模式図、混色相関図など)を、覚えるのが苦手な学生にもマスターしてもらわなければならない。大切なのは「徹底した繰り返し学習」、すなわち「忘れる前に復習する」です。これは当たり前のことですが、一人で学習するのは中々難しいもの。だから「授業の中で」それを実践します。授業は週1回(80分)です。翌週は、前の週の復習から始めます。色相環やトーン図などは、数週間にわたって毎回描きます。
    また、「原則、上から時計回りに描く」ことを徹底しています。色相環、混色相関図など、描き方がそれぞれ違うと覚えるのに効率が悪い。そこで、あらゆる図は「上から時計回りに」描くよう統一して指導するようになりました。図の構成要素を暗記することより、図の描き方を覚えることを重視しています。復習しながら新しいことを教えていくため、4月の入学当初は進むのが非常に遅いのですが、夏休みを過ぎたころからスパートしていき、どうにか冬期の試験に間に合わせています。夏休み期間は問題集に当たらせます。その際、「一挙にやるのではなく、少しずつ(毎日のように)、コンスタントにやるように。色彩の感覚を養うように」と指導します。

    • ヒストリー03
    • ヒストリー04
    • ヒストリー05

    配色カードを使ったJIS慣用色名についての実習。
    色彩の授業では、「色をしっかり見る」ことを重視している。色彩検定3級で問われる慣用色名について、配色カードから「近似色」を見つける実習は、学生も夢中になれる楽しい時間となる。

  • 教壇にいる/いないにかかわらず「色彩」と共に。

    私にとって「色彩」は、教壇にいる/いないにかかわらず、この先もずっと身近に在り続けます。教える立場にいるときは、学ぶ者に利することを第一に考え、「内容の吟味」と「教え方の試行錯誤」を継続することが目標です。教壇を離れているときは、①自分の専門である美術・芸術系の制作物に色彩を活かすこと ②好きな芸術家(パウル・クレーなど)の色彩を研究すること ③色彩に関わる絵本を制作すること……などなど、目標は数知れず。色彩は、私のライフワークの中に、ど〜んと居座り続けることでしょう。

    ヒストリー06
    自らの制作物にも色彩を活かす。
    上)『罪と罰』 下左)『GAGAKU』、下右)『yukyu』