私の色彩ヒストリー

自動車のインテリアをはじめ様々な製品のカラーデザイン全般をコーディネート。多様な素材や仕上げを含んだ色彩(CMF)の知見を次世代に伝え、体系化も目指す。

安岡義彦さん

色彩検定協会認定講師 第21期生
CMFデザイナー

安岡 義彦さん

  • 現場・現物主義で走り続けてきた四半世紀のカラーデザイン活動。

    私は、美術大学でデザインを学んだ後、京都の老舗テキスタイルメーカーで20数年間、自動車インテリア向けのテキスタイルデザインを担当し、世の中のトレンド、業界の市場調査からデザイン企画を経て実際にモノづくりを行い、プレゼンテーション、プロジェクト向けのデザインのブラッシュアップ、量産仕様決定にまで関わっていました。次第にテキスタイルも含めた自動車のインテリアデザイン全体のコーディネート提案を求められるようになり、デザインの視野がテキスタイル以外にも広がり、インテリア加飾のメーカーに転職しました。そちらでは、自動車から家電、携帯、PC、カメラ等プロダクトカラーデザイン全般に守備範囲を広げて、無我夢中でデザイン活動を続けていました。
    しかし、大学でも仕事でも現場・現物主義で走り続けてきた四半世紀のカラーデザイン活動を振り返り、もう少し色彩を体系的に捉え直すことで自らの経験の応用範囲が広がり、後に続く人にも上手く伝えることが出来るのでは?と一念発起し、色彩検定2級、1級を受検し合格しました。さらに講師養成講座を受けて認定講師の資格も頂きました。講師養成講座では、毎月2日間、終日、講義の他にほぼ毎月実習や発表がありました。参加者の真剣な取り組みは、テキストの内容を越えた苦心・創意工夫があり、お互いに刺激を受けた貴重な経験でした。

  • CMFに関わる経験知を次世代に伝え、
    CMF感覚を共有したい。

    量産に結びつく仕事は、全てクライアントとの守秘義務があってここではお伝えできないため、カラーデザインの講師活動についていくつか紹介します。
    私が担当する講義は、CMF(Color Material Finish)に関わるものがほとんどです。私たちの生活に溢れる色彩は、テキスタイル、加飾をはじめ、色だけを取り出して語ることは難しい多様な素材、仕上げを含んだ製品として存在しています。色彩と様々な素材と仕上げについては、各業界それぞれ独自のノウハウをもって、日々製品開発に取り組んでいますが、アプローチは個々の経験知と各人の感性に委ねられています。
    このような中、少しでも私自身の経験知を若い方たちに伝えられないかと思い、母校造形学部の視覚伝達、工芸工業デザイン学科で特別講義を担当しています。講義の前半は私自身が捉える様々なCMFについての紹介、分析を紹介して、学生達の気付きを促します。そして後半は実際に素材を使った演習を行うのが基本的な進め方です。表現力の豊かな美大生たちからは、私からのインプットを超えるようなアウトプットがあり、毎回、お互いに新鮮な驚きでCMFの豊かさを実感しています。【写真1】
    2019年から開催しているJAFCA(一般社団法人 日本流行色協会)でのワークショップでは、私のCMFについての気付きを紹介する講義、参加者が気になる製品のCMF分析、合同市場調査をします。そして、アイデアを共有しながら実際に手を動かして新しい素材感を創造し、様々な色と質感の素材を組み合わせた新しいコーディネーションを作成、発表を行うことで、お互いのCMF感覚を共有、共感そして磨く場としています。【写真2】
    カラービジネスの活性化を目的に、日本を代表する色彩関係団体や企業の集まりであるCBN(Color Business Network)カラーサロンでは、毎月色の専門家が集まり、様々な情報をシェアしています。CBNの「東京の色100」では、多彩な顔ぶれの色彩専門家がピックアップした色についてのショートコラムと測色結果が100色集められ、私も何色か寄稿しました。どのコラムも大変興味深く、それぞれの東京の色の視点、想いに、私の視野も広がります。【写真3】

    • ヒストリー01
      【写真1】武蔵野美術⼤学特別講義演習学⽣作品
    • ヒストリー02
      【写真2】JAFCA CMFワークショップ
      https://www.jafca.org/seminarandevent/20201210_001.html
    • ヒストリー03
      【写真3】CBNのWebサイト掲載「東京の⾊100」からの抜粋 http://www.color-biz.net/blog/index.php/tkylr/
  • 手付かずだったCMFの体系化をライフワークに。

    CMFは、見て触って感じるものです。私はこれまで、CMFを共感、共有することで、感じたモノの普遍性を確認していくワークショップのような、お互いの学びの場を設定してきました。
    今後は、これらの継続と併せて、CMFの体系化(CMFの考え方、定量化、触発するイメージ、文化によって生み出された経験に基づくイメージ、プロダクト、インテリア、環境色彩における変遷と今後の展望など)を古今諸先輩が積み上げた色彩の体系化を参考にさせていただきながら、素材、仕上げの要素を複合して捉え直すことをライフワークとして取り組んでいきたいと思います。