私の色彩ヒストリー

講師養成講座で色彩学から見た世界観に触れ、色彩の勉強は私にとって至福の時間に。受け継いだ化粧品店を舞台に、色彩のプロとしてお客様の望む「キレイ」をご提案する。

酒本 世津子さん

色彩検定協会認定講師 第17期生
サカモト化粧品店
日本色彩学会会員

酒本 世津子さん

  • 1級2次試験に合格してわかった
    「色の基本」の大切さ。

    私は化粧品店を営む家に嫁ぎ、美容の仕事を受け継ぐ中で、その大半を色彩と大きく関わってきました。具体的にはエステ、メイクセラピー、パーソナルカラーを展開させながらの商品販売です。20数年前から化粧品業界には価格破壊の波が押し寄せており、他メーカーとの差別化を図るため、一部のメーカーの美容部員は色彩検定3級の資格が必須となりました。私も取得すべく、最初はとにかく丸暗記の姿勢で臨んだのですが、合格してみると色彩の勉強が面白くなり、独学で2級・1級1次試験まで進みました。しかし、1級の2次試験で2度も落ちてしまい、添削指導を受けてやっと合格しました。指導を受けてわかったことは「色の基本」がおざなりになっていたことでした。それぞれの表色系を改めて見てみると、今まで一つ一つバラバラに詰め込んでいた知識がひとつの形になって見え始め、「なんだ、こういうことだったのか!」「なんと遠回りで曲がりくねった勉強をしてきていたのだろう」と、血の気が引くほどの驚きと戦慄を覚えました。

    • ヒストリー01
      酒本さんが経営するエステと化粧品の専門店
  • 正しく教えること・学ぶことの必要性を実感していたから。

    そして、色彩検定1級に合格して届いた講師養成講座の案内を見て、1級の先にこのような講座があることを知りました。1級合格を目指してひたすら頑張ってきたけれど、私は抱えきれないほどの美容の仕事を持っているのが現実だし、さて講師という資格が今の自分の仕事にどう生かせるのか、必要なのか、果たして人に教えるなんて大丈夫なのか? とはいえ、正しく教えること・学ぶことの必要性を身をもって感じていたのも事実。迷わず講師養成講座受講を申込みました。

  • 人生に行き詰まりを感じたとき、また養成講座を聴講したいと思う。

    半年間の講師養成講座では、各分野一流の講師陣から多岐に渡る内容の講義を受け、課題も出されるので大変だったけれど、私の内面にも大きく影響を与えてくれました。初めに「講師とは人間を相手にする職業である」と言われ、単に知識や技術を伝えるだけではないことを説かれました。とにかく勉強する! 生徒に伝えるときは自分が持っている知識の一部しか伝わらない、生徒と同じだけの色彩の力では教えられないと言われました。色彩に関する本も沢山紹介され、単なる知識だけではないそれらの内容に驚き、今まで見たこともない色彩の世界に引き込まれていきました。今も「色彩の心理学(金子隆芳著)」などは手に取るだけでワクワク感が消えません。色彩の勉強は私にとって至福の時間です。
    人生に行き詰まりを感じたとき、私は今もあの講師養成講座の聴講をしたいと願います。状況の全く違う人たちが一つになって熱心に講師の話に聴き入る。この光景はほかのセミナーでは味わうことが出来ないでしょう。講座の最終試験では、1分の狂いもなく決められた時間内に自分の模擬講義をします。内容は間違いないか、わかりやすい話し方か、そして講義内容のゴールはどこかが厳しく問われます。それは今まで自分が過ごしてきた時間軸と違いました。現実はこんなにも厳しいということを50歳過ぎてから思い知らされました。

  • 小さな化粧品店で日々展開されるミニレクチャー。

    私の店は70年以上続く小さな個人店です。講座を受けたベースがあるからこそ、今も充実した業務ができているのだと思います。お店に来てくださるお客様に、要望を伺ってミニレクチャーをさせていただくのですが、持ち時間は大丈夫か? どのような「キレイ」を望んでいらっしゃるのか? 今日はカウンセリングまで必要なのか? 多くのことを瞬時に判断して必要なものを提供しなければなりません。販売商品、美容の内容を含めてすべてタイムキープです。言うまでもなく時間が十分あれば誰でも思うように事が運びますが、大抵はハプニングやアクシデントが起きます。これらをどのように乗り切れるか、講座で身に付いたことがたくさん生かされています。

    • ヒストリー02
      講師養成講座で培ったことを念頭に接客しているという酒本さん
  • 化粧品の販売は結果であり、
    提供すべきはお客様が一番きれいに見える方法。

    色彩と化粧品は深く関係しているので、色の基本的な知識は不可欠です。昨今のファンデーションなどは光を駆使したレベルの高い商品が開発されています。また化粧品はファッション性が高く時代の流れも大きく影響してきます。消費者のニーズも多様です。パーソナルカラーも化粧品専門店では少し角度が違う場合もあります。「理想の肌色実現」と言われますが、そのとき見えただけの肌色とエステのあとの肌色では大きく違います。素肌の仕組み、色が見える仕組みを理解してもらい、どうすることがお客様の望む「理想の肌色再現」になるのかなどを、お客様と一緒に考えて合わせていきます。
    化粧品をお売りするのは結果であって、お客様が総合的に一番きれいに見える方法を考えます。日々勉強の毎日で、講座で培ったことを頭に置きながら伝えます。例えば、①人にものを伝えるとき:プロは難しいことも簡単に説明できる。アマチュアは簡単なことでも難しい説明になる②自分の話を相手が聞いているかどうか客観的に見る③お客様に合わせた化粧品の成分説明をシステマティックに伝えるというようなことです。
    人生100年時代に突入しています。1級の資格を取っただけでは味わうことのなかった色彩学から見た世界観を、美容を通して多くの人に伝えていければと思います。

    • ヒストリー03
      お客様にエステを行うための専用スペース
    • ヒストリー04
      わかりやすい説明を行うためのツールも準備