私の色彩ヒストリー

手が届かない(でも、いつかは到達したい)レベルの先生方から学べたことは貴重な財産。企業での色彩監修など難易度の高い仕事でも「色彩の基礎」をお伝えすることを大切に。

ながた みえさん

色彩検定協会認定講師 第3期生
ピアチェーレ カラースタジオ代表
カラーコンサルタント
パーソナルスタイリスト

ながた みえさん

  • 色彩は知的好奇心を刺激してくれる。

    「色彩」と出会ったことで私の世界の見方は一変しました。私にとっての色彩学の魅力とは、様々な分野の知らなかった世界に触れることができ、知的好奇心を刺激してくれるところです。色という切り口で物を見るようになると、目に入るもの全てが新鮮で、興味の幅は限りなく広がっていきます。色と出会ってからはファッションやアート、染色、心理、科学、国内外の文化や歴史など興味は尽きず、貪るように知識を吸収していきました。今思えば、その頃からの蓄積が色彩講師として役立っているのだと思います。

  • 講師養成講座でのノートは原点に立ち返るための宝物。

    幼い頃からオシャレ好きだった私が最初に色彩を学んだのはパーソナルカラーでした。その中でも興味を持ったのが色彩論の広がりです。カラーリストの資格取得後も学び続け、色彩検定を受検。1級合格後も「もっと学びたい!」という向上心と「何を教えてもらえるのだろう?」との期待から迷わず講師養成講座の受講を決めました。
    しかし、その受け身の姿勢は見事に打ち砕かれました。難しい課題に追われ、グループや個人での発表も高いレベルで行われます。学生時代よりも勉強した半年ですが、不思議と辛いとか嫌だと感じることはなかったように思います。
    各分野の一流の先生方から学ぶ内容とその切り口は新鮮でした。それに加え、講師を目指す者にとっては、手が届かない(でも、いつかは到達したい)レベルの先生から学べるのが何よりもありがたく、話し方や講座の組み立て方、雰囲気など全てが教材となりました。当時の分厚いノートを見返すと、未だに新しい発見があります。ページをめくるだけで受講時の熱気が蘇るのです。「私は今こんな講義ができているのだろうか?」こんな思いを抱かせるノートは色彩講師として原点に立ち返るための宝物です。

  • 「似合うヘアカラー」を提案するAI診断アプリの
    制作などを監修。

    現在は大学の理工学部で教壇に立つ傍ら、パーソナルカラーなどを活用したファッションのコンサルティングやカラーアナリストの養成、また企業で色彩に関する監修や講習などを行っていますが、どんな場合も「色彩の基礎」をお伝えすることを大切にしています。
    以前、頭髪化粧品メーカーで「似合うヘアカラー」を提案するAIパーソナルカラー診断アプリの制作に携わったことがありました。カメラで取り込む画像データと数種類の質問からカラータイプを導き出し、診断結果にマッチするカラー剤での染め上がりのシミュレーションを画面で確認できるものです。
    開発にあたり「光源やデバイスによる色の違い、ヘアカラーの履歴での染め上がりの違い」など、数えきれない難題に頭を悩ませました。これら全てをクリアにすることは叶いません。しかし「色彩の基礎」の理解が大切だという信念から、私が社内研修も担当し、光源の話や色の三属性などの基礎部分をしっかり学んでいただきました。おかげである程度の理解と共通認識を持って仕事を進めることができました。
    例えば、ヘアカラーの世界での明るさの物差し(レベルスケール)は、白と黒の間が灰色ではなくブラウンです。また、明るさのことをトーンと呼びます。共通認識がないと、同じ言葉を使っていても、話が通じないどころか、トラブルが起こることも容易に想像できますね。遠回りでも基礎的な部分で互いの共通認識ができているか確認することが、結局は早道なのです。

    • ヒストリー01
      「似合うヘアカラー」を提案するAIパーソナルカラー診断アプリ
    • ヒストリー02
      ヘアカラーの明るさ(トーン)の物差しであるレベルスケール
    • ヒストリー03
      商品であるヘアカラー剤で染めた毛束の微妙な色の違いを分析した(もちろん色彩の基礎に立ち返り、物理的条件を整えて行った)
  • あえて説明しないことで
    理解を深めるテクニックも駆使。

    こんな風にお話すると、「ずいぶんお堅いパーソナルカラーや講義をやっている」と思われるかもしれませんが、一般の方や学生にはそこまで難しい話はしませんのでご安心ください。
    たとえばパーソナルカラー診断ではタイプや理論を知るのが目的ではなく、お客様が“好き”を叶え、素敵になっていただくことがゴールの場合があります。そのような時は必要以上の理論や難しい話はブラックボックスの中に隠しておき、尋ねられれば説明すればいい。これは知識のブラックボックス化(わからないと思われるレベルまで話すより、話さないことで理解が深まる)という講師養成講座で学んだテクニックの1つです。説明しないことと、説明できないことは全く違います。そのあたりがプロとしての技量や厚みにつながるのではないでしょうか? これからも分かりやすく楽しい講座の一方で、さらに巨大なブラックボックスを満タンにすべく、様々な分野の知識を詰め込んで、私自身も楽しんで色彩と付き合っていきたいと思っています。

    • ヒストリー04
    • ヒストリー05
      大学での講義の様子