色彩の基本も業界の知識も欠如したまま、経営に携わり、ただただ実践で飛び回る日々。未達成感にさいなまれ、基礎から大幅にテコ入れしようと決意。色彩を学ぶことで奥深さを知り、終生関わり続けることを目指す。

色彩検定協会認定講師/26期生
ゴルフウエア等製造会社顧問
日本色彩学会会員
塚越 正敏さん
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オフィス家具やアパレルの経営を通じて色彩に出会う
オフィス家具商社の経営を任された時に、シカゴでのネオコン(NeoCon=北米最大規模の商業インテリア展示会)を訪れ、カラフルなオフィス家具に斬新な印象を受けました。その後、総合アパレルの経営に携わった時には、体系的、実務的な色彩関連知識もないまま、北は札幌から南は鹿児島まで百貨店を軸に売り場周りと自社の派遣FA(ファションアドバイザー)さんへの督励と情報収集、百貨店幹部への営業に努めました。メンズ、レデイス、キッズ、ゴルフ等に海外NB(ナショナルブランド)と契約していたこともあり、国内と並行して、苦手な語学を棚上げし、ロンドン、パリ、フィレンチェ、ニューヨーク、中国にとロイヤリティ交渉やライセンス契約継続のため、世界を行き来する超多忙な日々を過ごしました。
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▲ロンドンライセンス先 -
▲ニューヨークライセンス先 -
▲中国(オルドス) -
▲カシミヤ工場
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一線を退いた頃に芽生えた色彩検定への関心
業界の一線から離れて落ち着いた頃、面白かったけれど、やり残した感があり、ずっと心に引っかかっていた「色」の世界を基礎から体系的に知りたいと強く思いました。加齢で脳細胞が日々減少してゆくのを感じる世代で、一つ覚えて二つ忘れることになります。残された時間的余裕は全くなく、一気呵成に駆け抜けるしかないなと、薄々感じてのトライアルでした。
色彩検定及び公式テキストは3つの級に分かれていますが、年長者の「直観」で難易度だけではなく、実は色彩学として、積み上げているのだろうと思い、各級項目毎に同時並行に読み進みました。そうすると、あちこちでトンチンカンなことを言って実践してきたことが面白いように繋がり、あの時の話はこのことだったのか~とストンと体に染み渡っていき、そんなことも知らなかったのかと恥じることばかりでした。そのためか、二つ忘れてゆく加齢の恐怖は次第に薄らぎ、楽しい充実感が増してゆくのを感じました。 -
他業種の受講生たちとの出会いが刺激になった講師養成講座
店舗に派遣していたFAさんの集合会議で経営方針などを伝える機会も多かったことから、色彩検定1級取得後、講師養成講座を受講しました。受講者はアパレルの同業者が多いのではと思っていましたが、高校の理科や美術の先生(教員資格を持った本当の先生なんだーとなぜか身がピリッとしました)、インテリア業界、花屋さん、化粧品会社やIT関連の企業に勤める方など、実に多彩な顔ぶれで正直びっくりしました。そして、そんな方々と様々な情報を共有し、良い刺激を沢山いただき、色の持つ幅広い魅力を再認識することができました。
このような講座は、コロナ禍での運営はさぞかし大変だったのではと思いますが、私が受講した時は、対面で全会一同に会することが出来たので良かったと思います。もちろん、それぞれの分野のプロである講師の話は興味深く、テキストに書いてある内容を深掘りする機会を得ました。色彩の知識を広げることによって、美術館めぐりの味わいも一段と増して、日本色彩学会へも入会、現在は一番苦手としていたパーソナルカラーの指南を受けています。 -
CIC講座の受講でイメージの共有が可能に
ファションビジネスが大きなテーマでもあったため、さらに専門学校の夜間にも通ってみました。継続して初めてビジネスは意義のあるものとなります。せっかく興味がある色彩関連もビジネスとして成り立たないとただ単に「好きなこと」で終わってしまいます。そんな中で協会が主催しているCIC(カラーイメージコーディネート)講座にも参加してみました。
この講座内容の受け止め方、活かし方は業界によって違いがあるように思います。私のように受注生産でなく消費者の「飽き」を含めた変化の激しい市場と係わり、継続的事業を遂行していくには、この講座内容は不可欠なエッセンスを内包していると感じました。
ファションビジネスにおいても色彩だけではなく、素材、質感、形等が総合的に影響しあい、イメージが作られます。
また、多くの関係者が関わる事業では「ワード(言葉)」を介したイメージの共有も一つの手法として必要で、円滑にビジネスを進めるうえで大切なことだからです。唯我独尊はビジネスになりません。CIC講座では、自分のイメージに偏りがあることもわかりますし、その感性の「ずれの幅」を出来るだけ縮めることで、消費者にスムーズに訴えることが可能となり、多くの人達に浸透して強いブランドとして継続されてゆくのだと痛感しています。ある程度の基礎的知識の上に、早い段階から「太い幹」を感じ取る訓練は非常に大切なことではないかと思います。-
▲素材メーカー色・生地見本 -
▲パントンカラー イメージのずれをチェック
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色彩関連を終生のライフワークにしたい
現在はゴルフウエア等の製造会社で顧問をしています。様々な役割分野の人を見ていても、とにかくこの業界は、このことに接することが「好きなんだろうな」という人の集まりだなと感じます。この世界は奥がとても深そうです。好きなことが「継続」出来る様に、過去のつたない経験が少しでも生きればと願っています。そして化粧品会社に勤務する息子夫妻、お絵描きの好きな孫娘、色彩は世代を超えて繋がっていくと感じています。
▲ドレープ お絵かき色鉛筆