私の色彩ヒストリー

仕事で訪れたスーパーの陳列に目を奪われたことが、色彩を学ぶきっかけに。色彩の知識を活かした売り場を作ることにより、売り上げが大幅アップ。日常生活も豊かにしてくれた色彩の良さを伝えることが生涯の目標。

中嶋 康典さん

色彩検定協会認定講師/23期生
スーパーマーケット営業部

中嶋 康典さん

  • 色を活かした陳列に衝撃を受け色彩を学ぶことを決意

    もともと色に関してはまったく興味がなく、洋服を選ぶ際に少し意識する程度で、色彩について深く考えることはありませんでした。そんな私が色彩に興味を持ったのは、勤務先のスーパーマーケットで行われた店舗見学がきっかけでした。12年ほど前、会社からの提案で複数の店舗を見学する機会があったのですが、その中の1店舗が私の目を引きました。その店舗では、商品の陳列台に色付きの生地を敷き、その上に商品を並べていたのですが、それが1か所だけではなく、店内の何か所にも施されていました。私にとってその光景は極めて新鮮なもので、大変衝撃を受けました。少し興奮が冷め、店内をくまなく観察してみると、商品の並べ方にも工夫が凝らされていることに気づきました。見学した他の店舗でも商品はきれいに並べられていましたが、その店舗は陳列を工夫しているだけではなく、お客様への気配りも感じられたのです。今思うと、色相環の順番に並べていたり、黒を使ってセパレーション効果を出していたりと、要所要所で配色技法が効果的に使われていたことが、気配りを感じた要因だと思います。
    この体験をきっかけに、それまで興味がなかった「色のことを学びたい」という思いが芽生え、色彩検定3級・2級・1級と順に集中して取得しました。その後、講師講座の案内が届き、迷わず講座を受講することを決めました。

  • 講師養成講座で得た知識を店舗への業務に応用

    講師養成講座では、受講生の皆さんの熱心な学習態度と熱意に大いに刺激を受けました。受講生の中には現役の講師や異業種の方もいて、その方達との交流を通じて多くの学びを得ることができました。この講座を受講したことにより色彩に関する知識がさらに深まり、業務に応用することができました。
    例えば、売り場ごとにテーマカラーを決め、青果には自然そのものの安心感を与える緑、鮮魚は海をイメージする青、精肉には肉そのものの赤を使い、インパクトを与えて気分を高揚させてもらえるようにしました。さらに、通路を広くすることで開放感を持たせ、遠くからでも色分けされたそれぞれの売り場の位置が分かるよう工夫しました(売り場の写真①②)。加えて、カッティングシートを商品の下に敷き、色の効果を演出しました。例えば、お寿司売り場では中明度の緑のシート(写真③)を採用し、お寿司の色がより鮮やか見える効果を狙いました(写真④)。色彩の知識があまりないスタッフとも199aカラーカードを活用し、PCCSのトーン表を見ながら、実際に売り場でどのような印象になるかを話し合い、こうした方法をほかの売り場にも取り入れて活用しています。また、個々のスキルに依存しないよう、スタッフ全員で色の見え方やイメージを共有することも大切だと感じています。
    売り場で販売する上での情報になるPOPには、背景を最も明度の高い白、文字を最も明度の低い黒に設定しました(写真⑤)。この明度差により、10m離れた場所からでも見つけてもらいやすくなり、誘目性を高めました。

    • ヒストリー01
      ▲売り場の写真①
    • ヒストリー02
      ▲売り場の写真②
    • ヒストリー03
      ▲カッティングシート(写真③)
    • ヒストリー04
      ▲お寿司売り場(写真④)
    • ヒストリー05
      ▲POP(写真⑤)
  • 多面的にアプローチすることで店舗の成長を生み出すことに

    仕事においては、直線的な考え方ではなく多面的な考え方もできるように取り組んでいます。例えば、スーパーマーケットの経営では、商品を販売し原価を引いたものが利益になります。従って、利益を上げるためには、販売を強化する必要があります。これは決して間違った考えではありませんが、販売を強化しすぎると過剰な在庫が発生する可能性があり、そうなれば多くの商品の廃棄や値下げを余儀なくされます。一方、多面的な考え方に注目すると、売り場で色を効果的に活用したり、接客の向上により顧客満足度を高めて来店頻度をあげたりと、販売強化とは異なるさまざまなアイデアが生まれます。例えば、効果的なカッティングシートの活用や明度差を利用したPOPといった他店ではない取り組みを行うことで、差別化につながり、結果、目標より20倍高い売り上げを達成することができました。

  • 心を豊かにしてくれた色彩の良さを生涯に渡って伝えたい

    色彩検定とその先の講師養成講座を受講したことで、今回紹介したような業務への活用はもちろん、日常生活にも色彩の知識を取り入れるようになりました。例えば、洋服選びがスムーズになったことが時短につながり、時間ができることでこれまで以上に心が豊かになりました。
    色彩は、太古の昔から存在することからもわかるように、人の生活とは切っても切り離せないものです。そんな色彩の良さをより多くの方に伝えていくことを、生涯の目標にしたいと思っています。